【読書】木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
2011/9/30
著:増田 俊也
おことわり1
最初に断っておきます。この本を読んだのは発売されて半年後の2012年だったと思います。(約4年前)。
非常に面白くて、武道をしている人や格闘技好きには必ずススメていました。
今回も、この本をぜひ紹介したい!と思ったのですが、このページ数(この厚さ)をすべて読み返す力はありません。
ちょっと間違えている内容もあるかもしれないので、ご了承を。
この厚さ(全701ページ)
し・か・も二段組み!この本自体も武道だね。
おことわり2
さらに断っておきます。私は格闘技好き(マニア)ではありません。
しかしながら、普通の人よりはちょっと詳しいです。
なぜなら空手の経験が(少し)あるのと、学生時代の友人が格闘技マニアだったこともあり、四六時中 格闘技の話を私に注入してくれたからです。
総合格闘技が勃興し、世界の格闘家が来日した時代だった
リングスのヴォルク・ハン(ロシア サンボ)絡みつくような関節技に驚き!
ビターゼ・タリエル(グルジア 空手)スゴイ圧力
ジェラルド・ゴルドー (オランダ)極悪!マジで。
世界には色んな格闘家がいて、オランダ・ロシア・ブラジルでも格闘技が盛んなことを知りました。
サンボ教室に体験で行ってみると、汗まみれのオジサンにガッチリ首を極められて、「なんか気持ち悪い~」となって一日で終了したこともありました。(スイマセン)
地味なのに最強! そしてセコンドに「オジー」がいる
そんなこんなしているうちに、上着だけ柔道着を着た人が、地味な打撃からなぜか寝技に展開して勝ってしまう格闘家が出現しました。
さらに彼らは家族(一族)で試合会場に出てきて、トレインの列で入場する。
その中にオジーがいる。 「オジー」おじいちゃんの事
すでに、華やかに色どられた舞台と、派手でかっこいい選手たちに慣れていた僕たち。
そこに、すごーく地味なのに、すごーく強い「グレイシー柔術」が出てきて僕らは驚いた。
その後の400戦無敗の男「ヒクソン・グレイシー」の登場などで皆ご存じの「グレイシー祭り」が始まりました。
実は私、ヒクソンの戦っている映像は見たことありません(マニアじゃないから)。しかし、ヒクソンがヨガ(呼吸法が有名)をやっている映像は何度もみました。
それで、その列にいたオジー(無礼でスイマセン)こそが、グレイシー柔術の創始者「エリオ・グレイシー」なのでした。
そ・し・て、
そのエリオと半世紀以上も前に戦い、そして勝った日本人がこの本の主人公である「木村政彦」なのです。 やっと真打登場です
昭和のアベンジャーズ達
前置きがかなり長くなってしまいましたが、上に書いたエリオ・グレイシーとの対戦についても詳しく書かれているのが中盤あたりで、その前後には木村政彦の生涯について柔道を軸に綿密な取材をもとに書かれているのが本著です。
その木村政彦の凄まじい強さや生涯については本に任せて、昭和の格闘界の超大物二人(アベンジャーズ)の木村に対するコメントを紹介したいと思います。
あの、大山倍達が真樹日佐夫に言っていた言葉。(真樹先生も大物 ググってみて)
木村政彦は凄い。あんな凄い男はいない。ずっと私の憧れだった。あんな凄い男は絶対にもうでない。
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか P 679
そして合気道の達人、塩田剛三の言葉。今回少しだけ読み直して、木村と塩田が拓大同期で親友だった知って仰天!
木村政彦って男は本当にたいしたもんだよ。拓大もすごい男を出したもんだ。木村のような武の真髄を極めた男をだした大学は拓大以外にはない。拓大はもっと誇りを感じるべきだな」
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか P 679
大山倍達はあの極真会館の総裁(創設者)「空手バカ一代」のモデル。
塩田剛三 身長154cm、体重46kgながら合気道の達人で「不世出の達人」「現代に生きる達人」「生ける伝説」と言われた。(「塩田剛三」を動画検索すると面白いよ)
※二人とも刃牙に出てくるキャラクターのモデルだからね。
柔道(柔術)の歴史
ほぼ国技レベルのスポーツ「柔道」。しかしほとんどの人がその歴史についても知らないのではないでしょうか。
私も「なぜ柔道は講道館一つしかないのか?」漫然と思っていたのですが、その答えも柔道の歴史を紐解きながら知る事ができます。
実は柔道も戦前は今の空手の様に、色々な流派があり当身(打撃)も充実していたようです。
色んな柔道(柔術)の流派の技を見てみたかったな。多様性って大事だね。
まとめ
木村政彦さんは本当に強さもさることながら、酒・女・金と結構ヤンチャな人でもあったことも詳しく書いてあります。
そういった木村の隙が、プロレスラー力道山との因縁に絡んで行き、最終的にこの刺激的なタイトル「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」につながっていきます。
本作の著者である増田俊也さんの、取材や調査・インタビューに裏打ちされた真実の魅力もさることながら、増田さん自身が、柔道(高専柔道の流れをくむ七帝柔道)経験者であるため、木村政彦さんに対する尊敬の気持ちがひしひしと伝わってきます。
だからこそ最後は、事実に即した結論を出してくれています。
格闘技を好きだけでなく、自称格闘技好きもこの本を読めば、知識に厚みが増す事は間違いないので、ぜひ読んでいただきたい。
今の柔道への見方も変わる(歴史を知ってもっと楽しめる)と思います。
なによりも、あたたかい気持ちになる読後感があり、「やっぱり木村雅彦は最強だったんだな」と思わずにはいられなくなります。
おまけ(木村の坐禅)
私ヨギーとしては、坐禅についての記述を見逃すわけにはいきませんので、オマケにご紹介します。
古今の名著を読んで禅の世界に没頭した。
座禅を組むのは深夜である。
一時間から二時間。興が乗るとさらに。
こうして座禅を組むようになって一つの悟りを開いた。
負けたら腹を切る―ということである。
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか P 141
そしてブスッと本当に刺して、その時に死ねるか確認をしたらしい…
深夜に座禅して精神を統一していると、額に「勝」という文字と「負」という文字がしきりに交差しだす。何時間も何時間も座禅を続けるうちに、最後は「勝」の文字が金色になって額に燦然と輝いてくるようになったのだ。
木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか P 141
さすが木村!アジーナチャクラ(第三の目・サードアイ)から「勝」をイメージしていたのですね。
座禅をして「腹を切る」とか「勝!」など、ただならぬ戦闘力です。
更なる強さを引き出す方法として、座禅を取り入れたことはとても興味深いですね。